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【2006.Nov.11 pion7】 このコンテンツの親ページに行く

 大阪高裁で行われていた第二審の判決が下り、双方上告せず結審したので、ここにその判決文を公開する。AJOL社、その代理店による不正な勧誘活動を裁判で証明することの難しさが本裁判で明確になった反面、代理店研修費用が「特定負担」として認められ、その記載のない契約書は「書面不備」を理由に契約の解除を主張できる道が開かれたとも言えよう。

 特定負担に該当するもの、その"記載がない"という理由で、契約の解除−−−という判決は有る意味、画期的な判決かもしれない。一応、全文を掲載するものの「当裁判所の判断」に問題点が集約されているから、ぜひ、お読み頂きたい。



平成18年10月18日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平威17年(ネ)第1862号,同年(ネ)第2673号原状回復等請求控訴,同附帯控訴事件(原審・京都地方裁判所平成16年(ワ)第800号)
口頭弁論集結日 平成18年7月12日

判    決

東京都渋谷区東品川二丁目2番4号
控訴人(附帯控訴人。以下「控訴人」という。)
株式会社エイジェイオーエル
同代表者代表取締役  山本 正夫
同訴訟代理人弁護士

大阪府高槻市********
被控訴人A(附帯控訴人。以下「被控訴人A」という。)
同所
被控訴人B(附帯控訴人。以下「被控訴人B」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士

    
控訴人の本件各控訴および被控訴人Aの本件附帯控訴をいずれも棄却する。
被控訴人Bの当審で追加した新請求を棄却する。
控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は被控訴人らの各負担とする。


事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1.控訴人
(1)控訴の趣旨
原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
前項の取消部分について被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は第1,第2とも被控訴人らの負担とする

(2)附帯控訴の趣旨に対する答弁
本件各附帯控訴(当審において被控訴人Bが追加した新請求を含む。)を棄却する。
附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。

2.被控訴人ら
(1)控訴の趣旨に対する答弁
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。

(2)附帯控訴の趣旨
原判決中,被控訴人Aに関する部分を次のとおり変更する。
控訴人は,被控訴人Aに対し,56万6500円およびうち41万6500円に対する平成16年3月29日から支払済みまで年6分の,うち15万円に対する平成16年3月29日から支払済みまで年5分の,各割合による金員を支払え。
原判決中,被控訴人Bに関する部分を次のとおり変更する。
控訴人は,被控訴人Bに対し、55万6000円およびうち40万6000円に対する平成16年3月29日から支払済みまで年6分の,うち15万円に対する平成17年9月28日から支払済みまで年5分の,各割合による金員を支払え。
訴訟費用は第1,第2審とも控訴人の負担とする。


第2 事案の概要
 本件は,被控訴人らがそれぞれ控訴人との間で特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)所定の連鎖販売取引に係る契約を締結したとして,(1)被控訴人Aは,(ア)(a)特定商取引法40条に基づく契約解除による原状回復又は(b)消費者契約法4条に基づく取消による不当利益の返還として,上記契約に基づいて控訴人に支払った金員と同額の41万6500円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年3月29日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払と,(イ)控訴人の被控訴人Aに対する勧誘行為が不法行為に該当するとして,民法715条,709条に基づき,慰謝料10万円,弁護士費用5万円の合計15万円及びこれに対する上記平成16年3月29日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)被控訴人Bは,特定商取引法40条に基づく契約解除による原状回復として、上記契約に基づいて控訴人に支払った金員と同額の40万6000円及びこれに対する上記平成16年3月29日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原審は,(1)被控訴人Aの請求について,(ア)特定商取引法40条に基づく契約解除による原状回復請求を認め,41万6500円及びこれに対する平成16年3月29日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払請求を認容し(原判決主文第1項),(イ)不法行為による損害賠償については理由がないとしてこれを棄却し(原判決主文第3項),(2)被控訴人Bの請求については,これを認容した(原判決主文第2項)。
 控訴人は,原判決のうち控訴人敗訴部分を不服として控訴を申し立てた。被控訴人Aは原判決中同被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴を申し立て(なお,同被控訴人は,控訴人のなす連鎖販売取引自体が不法行為に当たると主張して,請求原因として追加した。),また被控訴人Bは,控訴人のなす連鎖販売取引自体が不法行為に当たり,直接勧誘を受けていない被控訴人Bに対しても不法行為が成立するとして,慰謝料10万円,弁護士費用5万円の合計15万円及びこれに対する附帯控訴状送達の日の翌日である平成17年9月28日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めて附帯控訴した。

基礎となる事実並びに争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の1及び2(原判決2頁22行目から11頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決の訂正
(1)原判決2頁22行目の「(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)」を「(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない事実又は弁論の全趣旨によって認められる事実である。)」に改める。
(2) 原判決4頁1行目末尾に次のとおり加える。
「すなわち,控訴人は,MOJICOの機器を販売し,同時に控訴人の会員となる者を募集しており,機器の販売及び会員への加入契約は,控訴人と客の間で行われるが,客に対する勧誘及び契約のあっせんは,代理店が行い,成約に至った場合,報酬プログラムに従った各報酬が代理店に支払われる。」
(3) 原判決4頁26行目末尾の次に行を改め次のとおり加える。
「上記代理店への報酬の分配の方法,仕組みは以下のとおりである(甲2,9,乙33,35)。
代理店に対する報酬は,各月ごとの新規会員の成約件数中のMOJICOの設置者の件数に対応して支払われる。新規会員は,控訴人に対し,MOJICOの設置届けを設置日の翌々月の10日までに届け出し,控訴人は,その設置届の件数に応じて同月20日に報酬を支払う。
MOJICOSF60を購入した者は,機器代金36万円と入会金2万円を支払う。控訴人は,以上合計38万円のうち,19万円を代理店の報酬とすることとしている。この19万円は,報酬単価である25万円の76パーセントにあたる金額である。なお,報酬単価が25万円というのは,控訴人においてそのように定めた額である。この19万円は次のcないしfに摘示するとおり支払われる。
手数料(25万円の10パーセント)は,新規会員を直接勧誘し,成約させた(以下,この行為を,「販売」ということがある。)代理店に支払われる。
アニュアル・マネージメント・フィー(25万円の3パーセント)は,講師に支払われる。
アクティブボーナスは,当該代理店及び当該代理店が直接勧誘した代理店の1か月の販売実績に応じて支払われるものである。代理店は下位店の販売実績に応じて,アクティブボーナスを受け取ることができるが,下位店にも固有のアクティブボーナスが計算されるので,当該代理店の受領できるアクティブボーナスは,自分から始まるグループの報酬単価合計からアクティブボーナスのパーセント(α)を判定し,直下の下位代理店の報酬合計を同様に判定し,アクティブボーナスのパーセント(β)を算定する。αとβの差のパーセンテイジを報酬単価合計に掛けたものが当該代理店の受け取る報酬額となる。
リーダーシップボーナスは,当該代理店の下位の系統での販売実績が1か月あたり250万円以上となった場合に計算される。ただし,250万円を販売した系統以外の系統での売上げがない場合は,当該代理店は,リーダーシップボーナスを受け取ることができないし,サイドグループの売上げがあってもそれが250万円に達しない場合は,リーダーシップボーナスの最低保証額(ディーラーの場合は40万円)全部を受け取ることはできない。前記のとおり,報酬は控訴人が代理店に分配するものであるが,比喩的には,代理店は直接自己が勧誘した下位の代理店からはリーダーシップボーナスを受け取り,自己を勧誘した上位の代理店にリーダーシップボーナスを払うものと観念できる。上位の当該代理店は,下位の代理店が合計250万円(10台分)販売した場合,リーダーシップボーナス40万円を受け取ることができるが,自己のサイドグループの販売実績がなければ,その40万円は,当該代理店のさらに上位の代理店にリーダーシップボーナスとして支払うため,当該代理店には報酬が入らないことになるのである。このようないわば素通りが重なった結果,リーダーシップボーナスについては,代理店に配分されず,控訴人に帰属する部分が生じ得る。
正代理店からディーラー,正規ディーラー,統括ディーラーへと昇格することによって,リーダーシップボーナスの取得可能な段階(ただし,前記のとおり,当該会員自身のサイドグループに販売実績がないような場合はこれを受け取ることができない。)が増える。正規ディーラーに1か月1000万円の販売実績があればリーダーシップボーナスの最低保証額は140万円であり,統括ディーラーが1か月2000万円の販売実績があれば最低保証額は300万円が準備されてくる。ディーラーのままで,売上額が上がっても最低保証額は40万円のままである。
 昇格のためには,原則として,資格をとる販売実績を上げた月の翌々月10日までに研修等の要件を満たさなければならない(申請は不要である。)。研修の受講回数は累計され,受講時期は販売台数達成後である必要はない。しかし,販売実績を満たしたが,研修の回数の要件を満たさなかったことなどから昇格できない場合、昇格するためには,再度,販売実績を満たさなければならないのが原則であるが,販売実績を上げた月の翌月末までに事務局へ事前申請することにより一定の救済措置を受けることができる。」
(4)原判決5頁8行目の「有効期間は1年間とされ,」を「有効期間は入会月度の初日から翌年同月度の最終日までとされ,」に改める。
(5)原判決6頁27行目の「記載を書き」を「記載を欠き」に改める。
(6) 原判決7頁13行目末尾の次に行を改め次のとおり加える。

「ウ 控訴人の当審における補充主張
(ア) 控訴人の主張
 平成17年3月末日現在,会員の87パーセント以上が,単なる「正代理店」にすぎず,資格段階を昇格した会員はほんのごく一部である。そうであるとすれば,控訴人の報酬プログラムは現実の取引実体からみて,資格段階を昇格していくことを当然の前提としているとはいえない。また,仮に会員が代理店研修ないし新代理店研修及びLWS(以下「本件有料研修」ということがある。)が拒み得ない金銭的負担とするならば,本件有料研修を受講していない会員はほとんどいないはずである。しかしながら,Acubeの入会者の中でも,本件有料研修の受講者は一部にすぎず、実際に本件有料研修を拒んだ会員は相当数いる。そうであるとすれば,現実の取引実体からみて,本件有料研修を拒むことができない金銭的負担であるということはできない。

(イ) 被控訴人らの反論
 現実に会員が資格段階を昇格するかどうかを問題とすべきではなく,会員の目的として,資格段階を昇格していくことを前提とするものであるかが問われるべきである。控訴人は,報酬プログラムガイド(甲9)にもあるとおり,より上位の資格段階になればより有利な報酬が得られること及び昇格のために何台のMOJICOを販売しなければならないかを示しており,会員が資格昇格を目指して代理店活動を行うことが当然の前提となっている。」
(7) 原判決9頁1行目の「消費者契約法4条3項」を「消費者契約法4条3項2号」に,10頁27行目の「特商法」を「同法」に改め,11頁7行目の「前記のとおり,」を削る。

被控訴人らの当審における主張
(1) 被控訴人らの本件連鎖販売取引そのものの不法行為該当性についての主張

(被控訴人らの主張)
本件連鎖販売取引の不当性
本件連鎖販売取引は,以下に述べるとおり,公序良俗に反する不当なものであるから,そのような取引を統括する控訴人は、本件代理店契約の締結により,被控訴人らが被った損害を賠償する義務がある。
(ア)MOJICO自体は,本質的には,OCNを利用して,PAN PACIFIC ONLINEに接続することができるファックス電話にすぎず,NTTのLモード対応ファックス電話と同種のものである。そうであるのに,画期的な開発をしているように宣伝し,その価格も38万円と高額である。しかも,高額な販売代金の少なくとも半分が,開拓プログラムにより,あっせん者に利益配分される。
(イ) 本件連鎖販売取引は,圧倒的多数の者の損失を前提に,少数の上位代理店が利益を得ることを目的とした取引である。まず,Acubeにおいては,昇格が著しく困難である。そして,控訴人の報酬プログラムのうち,新規加入者の勧誘に対する報酬である開拓プログラムによれば,利益配分の原資は販売代金の50パーセントであるところ,加入者全体の収支をみれば,単純に考えても少なくとも1人の代理店が2人以上を勧誘しなければ元がとれない。そして,本件代理店契約においては,商材の性質上,リクルートしうる人数に自ずから限界がある。したがって,開拓プログラムによる報酬からの投下資本の回収を考えた場合,後に加入した大半の者がこれを回収することはほぼ不可能である。
 これらに照らすと,本件連鎖販売取引が,圧倒的多数の者の損失を前提に,少数の上位代理店(ないし控訴人)が利益を得る仕組みとなっていることは明らかである。
(ウ)本件代理店契約は,多くのMOJICOの販売をなし,資格段階を昇格すればするほど,より有利な報酬を受領できるものとして,いたずらに代理店の射幸心をあおるものとなっている。
(エ)本件代理店契約は,かもめ共済という無認可共済と抱き合わせ契約となっている上,その共済掛金の一部は,流通プログラムにおいて,各代理店への報酬の原資となっている。
(オ)被控訴人A以外の他の被勧誘者に対しても,被控訴人Aにされたのと同様,代理店契約により,報酬を得られることが確実であるかのように断定的判断を提供したり,執拗な迷惑勧誘がなされたもので,国民生活センターにも多数の苦情が申し立てられている(甲11,23)。以上のとおり,本件連鎖販売取引そのものが公序良俗に反し,違法・不当なものであるから,これを主宰し統括している控訴人は,被控訴人らに対し,本件代理店契約の締結によって被った損害を賠償する責めを負う。
損害
(ア) 被控訴人Aは,本件代理店契約@の締結により以下の損害を被った。
a MOJICO購入代金        37万8000円
b 入会金               2万1000円
c cube代金              1万7500円
d 慰謝料               10万円
e 弁護士費用             5万円
f 合計                56万6500円
(イ) 被控訴人Bは,本件代理店契約Aの締結により以下の損害を被った。
a MOJICO購入代金        37万8000円
b 入会金              2万1000円
c cube代金               7000円
d 慰謝料             10万円
e 弁護士費用            5万円
f 合計              55万6000円


(控訴人の反論等)
本件連鎖販売取引は,特定商取引法の規定を遵守し,その趣旨に沿った適正なものであり,何ら不当な部分はない。
(ア) 被控訴人らのア(ア)の主張について
 MOJICOは,単なるファックス電話とは本質的に異なる,控訴人の開発に係る独自の製品であるから,単なる機器としてのファクス電話と価格の比較をすることは意味がないだけでなく,次のようなMOJICOの性能,機能からすれば相当な価格である。
 すなわち,本件連鎖販売取引は,MOJICOというマルチメディア機能を有する機器を媒体として,インターネットのような通信網を構築し,その相互回線を利用した情報提供を行うシステムを,連鎖販売という取引形態で販売されたものである。MOJICOはこのシステムのために開発,製品化されたものであり,これと同一の機器は存しない。MOJICOは電話機やファックスとしての利用ができることはもちろんのことインターネットやメールと類似機能を有しながら,パソコンのインターネットよりも,その操作性,安全性,情報取得性において優れた機能を有している。
 MOJICOは,上記のような特質,機能を有するシステムのために開発,製品化された商品であり,また,その価格の中には代理店への販売報酬が含まれているのであるから,適正価格であることは明らかである。
 また,被控訴人らは,販売価格の少なくとも半分があっせん者等に利益配分されるとも主張するが,そのこと自体には,何らの問題もない。一般の流通商品においても商品原価,利益等のメーカーへの配分率が定価の50パーセント程度というのは珍しいことではない。また,連鎖販売の主宰企業において,代理店への報酬分配率が販売価格の40から60パーセント程度であることは公知の事実である。控訴人の50パーセントの分配率が違法というのであれば,現在活動している主宰企業はすべて違法ということになるのであり,常識外の主張であることは明白である。

(イ) 被控訴人らのア(イ)の主張について
 被控訴人らがいったい何をもって「損失」と主張しているのか意味が不明である。MOJICOは単なるファックス電話ではなく,優れた性能,機能を有しているのであるから,代理店はMOJICOを入手するために正当な対価を支払っているにすぎず,損失が発生するはずはない。
 また,正当な対価を払ってMOJICOを入手しているのであるから,すでに「元」はとれているはずである。また,連鎖販売取引は,銀行預金のように会員に一律に利息を保障する事業ではない。

(ウ) 被控訴人らのア(ウ)の主張について
 本件連鎖販売取引は,上位であるか,下位であるかではなく,それぞれの代理店の営業努力によって,公平な報酬が支払われる仕組みになっているのであり,射幸心とは何の関係もない。

(エ) 被控訴人らのア(エ)の主張について
 被控訴人らの主張する「抱き合わせ契約」という意味も不明であり,何という法律に反し,何が問題なのかも不明である。

(オ) 被控訴人らのア(オ)の主張について
 被控訴人らの援用する甲11,23記載内容の信用性は乏しいものである。多数の消費者を対象とする事業においてはある程度の相談事例や苦情の事例はつきものであり,それ自体を問題とするにはあたらない。また,控訴人は不当勧誘防止のために適切な措置をとっている。

(2) 特定利益の記載について

(被控訴人らの主張)
 本件契約書面中には,報酬プログラムのうち,流通プログラムについて,商品等の金額に対して収受し得る特定利益の金額の割合が具体的に記載されていない。すなわち,流通プログラムの対象となる流通商品が何か,報酬単価がいくらかについての明示がない。
 したがって,本件契約書面は特定商取引法37条2項所定の契約書面に該当しない。

(控訴人の反論)
被控訴人らの主張は,原審において,当然主張し得た内容であり,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。また,報酬額の計算方法,報酬額の支払の条件等に関する記載は本件契約書面中に具備されているから被控訴人らの主張は理由がない。

第3 当裁判所の判断
当裁判所の判断は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし3(原判決11頁26行目から21頁10行目まで)の説示と同一であるから,これを引用する。
(1)原判決15頁5行目,同9行目及び同13行目から14行目にかけての各「受講票を提出しなかったこと」を「受講票を連続4つの月度の間提出しなかったこと」に,同23行目及び同26行目の「1000円」を「1050円」に改める。
(2) 原判決19頁1行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「控訴人の当審での補充主張に鑑み,有料の研修に伴う金銭的負担が特定負担に当たることについて更に説示する。
連鎖販売という仕組みがとられた場合,商品の購入者はその販売の対象となる商品それ自体だけでなく特定負担と特定利益(特定商取引法33条参照)に着目して当該商品を購入するかどうか決めているのであり,連鎖販売業を主宰する者においても,商品購入者のこのような姿勢を予定,利用して,商品の売上げを伸ばし利益を図ろうとしていることは明らかである。したがって,主宰者側において,特定利益を強調し,特定負担を隠蔽しようとする傾向が生じるため,商品購入者の判断を誤らせることのないように特定利益及び特定負担の内容を明示させるべく法規制を加える必要性が生じることとなる。
基礎となる事実(1)のイの(オ)において摘示したように,本件における連鎖販売システムにおいて控訴人から代理店に分配される報酬のうち,代理店の資格段階にかかわらず販売数に応じて支払われる手数料よりも代理店の資格段階に応じて支払われる各種ボーナスの比率の方がはるかに高いのであり,各種ボーナスは特定利益の中で最も重要なものであると認められる。したがって,このボーナスを受けるために必要とされる研修に伴う金銭的負担が事実上拒み得ないものであることはこれを優に肯認できるところである。現に控訴人においても,報酬プログラムガイド(甲9,乙33)において,より上位の資格段階になれば有利な報酬が得られること及び昇格のために何台のMOJICOを販売しなければならないかを記載し,会員が資格昇格を目指して代理店活動を行うことが前提となることをしめしており,少なくとも正代理店がアクティブボーナスを取得するために有料である代理店研修又はLWS受講が必要であることは自認しているところである。有料の研修を受講することが被控訴人らの債務内容となっていたかどうか,義務的であったか否かは問わず,有料の研修に伴う金銭的負担(受講料)は当該連鎖販売取引に参加した場合に拒み得ない金銭的負担といえるもので,本件有料の研修を受けない商品購入者がいたからといって上記判断が左右されるものではない。また,代理店の資格段階が上がるにつれて報酬が多くなる一方,資格段階を上げるためには一定数の販売をしなければならない等の負担を伴うのであり,このことは連鎖販売取引においてほぼ共通してみられる仕組みである。したがって,代理店の資格段階が上がるにつれてその地位にある者の数が少なくなるというのはいわば当然のことであって,このことも上記認定を左右できるものではない。」
(3) 原判決20頁11行目の「●●に対する個人的な信頼」を「●●に対する懸想」に改める。

注釈:「●●」は、ある代理店の氏名が記載してあるため、これを伏せ字とした。
被控訴人らの当審における主張について
(1) 本件連鎖販売取引そのものの不法行為該当性についての主張
被控訴人らは,本件連鎖販取引の実体に鑑みると,これに係る契約自体公序良俗に反する不当なものであるから,そのような取引を統括する控訴人は,本件代理店契約の締結により,被控訴人らが被った損害を民法709条に基づき賠償する義務がある旨主張している。
そこで同主張について検討するに,乙第56号証によれば,連鎖販売の主宰企業において,代理店への報酬分配率が50パーセントに及ぶことはあり得ることであると認められる。被控訴人らのア(イ)の主張については,MOJICO自体の経済的価値が零か極めて低いことを前提とする立論であるといえる。すなわち,被控訴人らは1人の代理店が2人以上を勧誘しなければ,元がとれないこと,後に加入した大半の者がMOJICOの販売代金を回収することはほぼ不可能であることを主張しているが,これは,MOJICOの購入自体によって既に購入者に損失が生じておりその購入代金全額を回収しなければならない立場に置かれることを前提とする立論であるといえる。確かに,商品の経済的価値が極端に低く,商品販売に名を借りて無限連鎖講又はそれと類似の機能を持たそうとして連鎖販売取引を主宰する場合等において,そのこと自体が違法性を帯びることもあり得るが,本件のMOJICOが不当に高額であると認めるに足りる証拠はない。また,前記認定に係る特定利益や特定負担の内容を含む本件連鎖販売のシステムは典型的な連鎖販売取引のひとつであり,被控訴人らの主張上も,本件全証拠によってもこれが特別な仕組みによって運営されているとは認められない。法は連鎖販売取引については無限連鎖講と違い,一律にこれを禁止するのではなく,前記の観点からの法規制を含む各種の行為規制によって悪質な連鎖販売取引を排除しようとしているのであって,少なくとも典型的な連鎖販売取引に係る契約について,法規違反の有無を問わずに,公序良俗に反するとして無効とすることは上記法規制に必ずしもなじむものではない。被控訴人らのア(ウ)の主張についても前記説示のとおり,連鎖販売取引の仕組みに共通してみられるところであって,本件が特に射幸性が高いことを裏付ける証拠はなく,被控訴人らのその他の主張も公序良俗違反を根拠づけるものとはいい難く,他に本件連鎖販売取引自体が公序良俗に反することを裏付けるような証拠はない。
(2) 特定利益の記載について
前記に説示したとおり,本件契約書面に特定負担の記載がないことから被控訴人らによる解除が認められるのであるから,特定利益の記載の有無について判断することを要しない。なお,被控訴人らの消費者契約法4条の規定に関する請求についても判断を要しないこととなる。

以上の認定及び判断の結果によれば,被控訴人Aについては特定商取引法40条に基づく契約解除による原状回復請求は理由があるから,41万6500円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年3月29日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払請求を認容すべきであり,勧誘に当たっての不法行為を原因とする損害賠償請求については理由がないからこれを棄却すべきである。被控訴人Bについては,特定商取引法40条に基づく契約解除による原状回復請求は理由があるから40万6000円及びこれに対する平成16年3月29日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める請求はこれを認容すべきである。また,本件連鎖販売取引そのものが不法行為に該当することに基づく被控訴人らの損害賠償請求(被控訴人Aについては当審で追加した請求原因に基づくもの,被控訴人Bについては当審で追加した新請求。)はいずれも理由がない。そうすると,当裁判所の上記判断と符合する原判決は相当であり,控訴人の本件各控訴及び被控訴人Aの本件附帯控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却し,被控訴人Bの当審において追加した新請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官     ○ ○ ○ ○
裁判官     ○ ○ ○ ○
裁判官     ○ ○ ○ ○
【2006 Nov.11】
 長文で、聞き慣れない言葉も多く、「何を書いてんだか良く分からないや」という向きもあるので、簡単に要約してみましょう。

 代理店が金銭をAJOLに支払う「特定負担金」が主な争点です。代理店研修会・LWSの受講料が、特定負担金に該当するという判断がありました。

 しかし、当該契約書にその記載がなく、特定商取引法・連鎖販売取引に沿った契約でないと認められ、それを理由として、代理店からの契約解除、原状回復(契約前の状態に戻す)の請求が認められました。
  • AJOLの主張、「契約として成立している」は却下。
  • 代理店からの原状回復以上の賠償請求は認めず。